調緒(しらべお)とは、日本の代表的な伝統芸能である能などで活躍する楽器、鼓(大鼓、太鼓、小鼓)で使用される紐のことである。
 能の世界では、単に「しらべ」と呼ばれることが多い。
 調緒は、鼓の皮・胴・皮の間に張られて皮を締め付け、それぞれの楽器にあった音色を出す役割を担っている。演奏中、大鼓と太鼓の調緒は皮を締めて固定されたままだか、小鼓の場合は音色を変化させるためにも使われる。

IMG_0045 ※写真は大皮用の調緒

 



種 類
 調緒の種類は大きく分けて「縦」の調緒と「横」の調緒がある。太鼓の皮・胴・皮の間に張られるのが「縦」であり、この調緒が主に皮を締め付ける役割を果たす。そして、張られた「縦」に巻き付けて、さらに皮を締め付けるのが「横」の調緒である。この他、「化粧」という調緒もある。この「化粧」は、皮を締め付けるというよりも飾りとしての意味が強い。特に大鼓の場合は、「縦」の調緒だけで皮を締め付けるため「横」は使用しない。「横」のかわりに化粧を「縦」に軽く巻いて下に垂らし、飾りとしている。

 楽器毎の調緒の種類には、次のようなものがある。
 ◆大鼓(おおつづみ・おおかわ)用の調緒には「縦」と「化粧」がある。「横」はない。
 ◆太鼓(たいこ)用は「縦」と「横」がある。
 ◆小鼓(こつづみ)用は「縦」と「横」と「化粧」がある。小鼓の場合、さらに調緒の端を結ぶための小紐(こひも)という細く短い紐も使う。


形 態
 三つの楽器により、それぞれ調緒の太さと長さが違う。一番太く長い調緒は、一見すると太鼓用に思えるかもしれない。しかし、太鼓用は小鼓の調緒と長さ、太さ共にあまり変わらない。
 一番太く長い調緒を使うのは大鼓用である。それには、以下のような理由がある。

 能楽ファンなら一度は聞いたことがあるだろうが、大鼓はカーンという非常に固く高い音を出す。そのため、非常に強く皮を締め付けてその音色を出すために、他の調緒に比べて非常に太く長い。登山用のザイルと変わらないほどである。

 ところで、通常は、高い音を出す楽器の胴はより小さい。例えば、クラシック音楽では、高温域のバイオリンの胴は小さいが、低音域のコントラバスの胴は大きい。
 しかし、先に書いたように能の楽器で、高い音を出すのは胴の大きさが中くらい大鼓である。一番小さい楽器である小鼓はポンという愛らしく低い音を出す。もしかしたら、一番小さい小鼓は一番大きな太鼓と同じ程度の低い音を出す時があるかも知れない。
 この楽器の大小の違いによる音色の違いは、能楽公演などを見ていると面白いギャップがある。

 調緒の色は「朱色」とよばれる赤色に少し片寄ったオレンジ色を基本としている。朱色というと赤色を連想しがちだが、能楽の場合、黄色といってもよいほど一般的な赤色からは遠い色の調緒すらある。いわゆる印刷の世界で金赤といわれる通常の赤色はほとんど無い。
 ただし、小鼓はは少し事情が違う。小鼓の奏者である小鼓方は他の二つの楽器担当者よりも少し「しゃれっ気」があるようで、朱色だけではなく紫や茶色など様々な色の小紐や調緒を使う。


材質、製作方法
 本来、調緒の材質は麻糸を使用するが、麻は強度的に弱点があり、麻のカスが舞台を汚すなど理由から合成繊維を使用するプロの能楽師もいる。
 製作方法は、麻製にしても化学繊維製にしても、日本古来の手法でなわれたワラ縄(荒縄)に似ている。つまり、繊維を適当な太さの紐として、その紐に縒りを掛けて仕上げる。
 現在、市販されている一般的なロープは3本の紐で縒るのが基本で、仕上げは左方向(左回転)によられる。しかし、調緒は古くから2本の紐で縒られているうえ、縒る方向は右方向(右回転)である。